借金返済 債務整理|借地権の譲渡が納税上に与える影響は?

原告
本件
課税

○主文

本件控訴を棄却する。
控訴費用は控訴人らの負担とする。

○事実

第一当事者の求めた裁判

一控訴人ら
1原判決を取り消す。
2被控訴人が昭和五八年六月一六日付けで承継前の原告Aの昭和五六年分所得税についてした更正のうち分離課税の長期譲渡所得の金額七一六八万六四二〇円を超える部分並びに同人の同年分所得税に関する過少申告加算税賦課決定のうち税額七七万七一〇〇円を超える部分及び重加算税賦課決定を取り消す。
3訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。
二被控訴人
主文同旨

第二当事者の主張

当事者双方の主張は、次のとおり付加するほか、原判決の事実摘示記載のとおりであるから、これを引用する。
(控訴人らの主張)
一適用条文の誤りに基づく本件処分の違法について
1原判決は、本事案に租税特別措置法(以下「法」という。)三七条の五を適用すること(被控訴人は、本件処分に当たり法三七条の五を適用した。)が誤りであり、本事案には法三七条を適用すべきことを明らかにした。
2ところで、租税法体系の下では、租税軽減措置を受けるべく措定された特例適用条文について、納税者(申告者)に選択権が権利として付与されている。
この選択権は、特例適用を受けるか否か、受けるとしても、どの特例条文の適用を受けるのかを選択する権利であり、申告納税制度の重要な内容をなしているから、この選択は、納税者の申告に係らしめられており、その結果が有利になるか否かは、納税者の判断にゆだねられている。
したがって、納税者が、申告時に、ある特例条文の適用を求めた場合、納税者がこれに拘束されることはもとより、課税庁も、更正等に当たって特例適用条文を変更することは許されないものというべきである。
また、特例適用条文に関する規定は、申告後の納税義務を確認するという租税手続法としての内容を有するものであるところ、行政行為の法適法性という見地からすると、特例条文の適用を誤った本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法性があるものというべきである。
3したがって、租税軽減措置に関する特例条文の適用を誤った本件処分は、そのことのみで違法なものとして取消しを免れないところ、原判決は、これを取り消さず、法三七条の五の適用による課税額が法三七条を適用して計算した課税額の範囲に収まる旨認定判断し、本件処分を適法として控訴人らの請求を棄却した原判決は、課税額の多寡の違法の是正によっては救済されない手続的違法を看過したものであり、取り消されるべきである。
二土地所有者が買戻しな借地権等の取扱いについて
l原判決は、土地所有者が借地権を設定して貸与している場合の借地権部分の事業供与性について、控訴人らが、事業用資産として保有されているのは底地のみであり、借地権は非事業用資産であると解すべきであると主張したのに対し、「土地の所有者が当該土地を第三者に不動産貸付けの事業として賃貸したことにより当該第三者が当該土地につき借地権を取得した場合であっても、当該土地は借地権付の土地になっただけであって、土地所有者が不動産貸付けの事業の用に供しているのが当該土地全体であることに変わりはないのであるから、借地権と底地とを区別して底地のみが事業の用に供されているものと解することは相当でない」として、本件で、Aが買戻した借地権は底地と共に事業用資産であり、譲渡の対象となる資産に該当すると判示した。
2しかしながら、本件譲渡所得課税における旧借地権部分の取扱いは、次のとおり所得計算されるべきであり、当審においてこれを新たに主張する。
すなわち、本件における譲渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を譲渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用に該当するものというべきである。
けだし、譲渡所得課税の趣旨は、保有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるところ、本件のように、専ら借地権が設定されている当該土地を譲渡するため、その譲渡契約履行のために借地契約を解除し、その後直ちに当該土地を譲渡した場合には、取得した借地権の増加益を期待したものとはいえず、したがって、本件旧借地権部分の借地権消滅の対価としてAが借地人に支払った金員は、譲渡所得を発生させる資産(借地権)の取得費ではなく、当該土地を譲渡するための費用となるべきものである。
そして、右控訴人らの主張に立脚して、本件譲渡所得額の計算をすると、別表1のとおりとなる。
3仮に、右主張に理由がないとしても、本件の譲渡資産は、旧底地部分と旧借地部分とに別れるところ、旧借地部分は、短期譲渡所得に該当する非事業用資産として所得計算されるべきである。
すなわち、税法上は、ある土地に借地権が設定された場合、土地所有権のうち使用収益権が借地権者に移転し、底地処分権が所有者に止まることを出発点にして、つまり土地が借地権と底地(所有権)に分離されたものとして以後の課税関係が律せられるところ、土地所有者が借地権を買戻して、これを事業の用に供することなく直ちに土地全体を譲渡した場合には、借地権は民法上混同により消滅するが、税法上はあくまで非事業用資産である借地権と事業用資産である底地とがそれぞれ譲渡されたものと観念し、各々別個の譲渡所得を構成するものと考えるべきである。
そして、右控訴人らの主張に立脚して、本件譲渡所得額の計算をすると、別表2のとおりとなる。
三無償貸借部分と事業用資産の範囲について
本件譲渡資産のうち、Aが当初から所有していた土地一一四四・七七平方メートル(原判決添付の別表二の本来部分)の一部には、Bに無償使用させていた土地九八・六〇平方メートルが含まれているが、右無償使用部分の全体に占める割合は八・六パーセントに過ぎず、「事業の用に供されていた部分がおおむね九〇%以上」(法関係通達三七四)の要件に該当するから、右無償使用部分を含めた本来部分全体が事業用資産に該当するものとして所得計算されるべきである。
けだし、控訴人らは、従前、右無償使用部分が原判決添付の別表二の1の土地(一三〇八番の土地)のみに対して占める割合一二・四パーセントを問題にしてきたが、原判決添付の別表二の2の土地(一三一八番の土地)は一三〇八番の土地と一体となってAの事業の用に供されてきたものであるから、その中で無償使用部分が占める割合を取り上げるのが正当であるからである。
本件買換資産である新不動産(原判決添付の別表三の1ないし9の不動産)の全部が事業用資産に該当することは従前主張したとおりである。
四新井組に対する工事支出金等について
1原判決は、新井組に対する工事支出金等二〇五八万三四七八円について、旧不動産が支障なく譲渡されるために支出されたものとして、これを譲渡費用であるとしたが、右判断は、明らかに判例に違反している。
すなわち、所得税法三三条三項に定める「譲渡費用」とは、「譲渡のための周旋料、登記料、借家人の立退科等のような譲渡そのものに関し、直接必要な支出」と解されてきており、これが判例の立場である(東京高裁昭和四八年六月二八日判決・税務資料七〇号五五二頁、同昭和五一年五月二四日判決・税務資料八八号八四一頁、同昭和五二年一〇月一二日判決・税務資料九六号五頁、最高裁昭和五〇年七月一七日判決・訟務月報二一巻九号一九六六頁、神戸地裁昭和六〇年九月三〇日判決・税務資料一四六号七六七頁)。
このように、「譲渡費用」とは、譲渡に際して支出される費用のうち、当該譲渡のために直接必要な費用に限定されているのであって、原判決のように「支障なく譲渡されるために支出されるもの」すべてが譲渡費用となるものではない。
仮に、譲渡費用の性格を原判決のように解するとしても、本件の工事支出金等は、その支払がなくても、譲渡に支障がないか、あっても、その支障性は、前記最高裁判決等が譲渡費用に該当しないとしている譲渡不動産の被担保債権の弁済金等よりも低いものである。
2原判決は、「資産の取得に要した金額」として譲渡による収入金額から控除されるのは、資産の取得に関連して支出した費用のうち、一般的に右取得における当該資産の客観的価値を構成する費用に限定されるとした上、本件の工事支出金等は、新不動産の取得とは直接関係なく支出されたものであり、新不動産の客観的価値を構成するものではないとして、これが新不動産の取得費に該当しないとした。
しかしながら、税法及び税実務においては、取得費をこれほど厳格に解釈していない。
例えば、所得税基本通達三八九の二は、「いったん締結した固定資産税の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金」を取得費としているが、この違約金が新取得固定資産の客観的価値を構成するとは到底いえない。
これは、最終的にはある固定資産を取得する目的の下、時間的にも当事者の意図としても、違約金支出が新固定資産取得との間に相当因果関係ありとして、その取得費性を認めたものにほかならない。
本件においても、新井組に対する工事支出金等と当初目的としていた賃貸マンション「トヤママンション」たる新固定資産の取得との間には、右因果関係があるものと考えるべきであり、事例としては、正に前記通達の内容と何ら変わりがないのであるから、本件工事支出金等を取得費に含めるべきである。
なお、日綿との等価交換契約は、Aにとって、買換資産である新動産の取得を目的として行われたものであるから、その収入印紙代金の全額が買換資産の取得費に当たる。
五譲渡資産と買換資産の対応(買換取得資産を按分計算すること)について原判決は、譲渡資産と買換資産の対応関係につき、譲渡事業用資産に対応する買換資産の取得価額を、譲渡した短期・長期各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算しているが、法三七条及び法施行令二五条四項(昭和六二年政令三三三号による改正前のもの)の各規定のどこをみても、買換資産の一部のみを按分して譲渡事業用資産に対応させるべきであるとする規定はない。
しかるに、原判決は、このような按分方法が相当というのみで、何らの理由も付していない。
前記のとおり、新不動産は、そのすべてが事業用資産であるので、取得資産の全部を譲渡した事業用資産に対応する買換資産とすべきである。
なお、控訴人らは、従前、短期譲渡(付加部分譲渡)所得金額にかかる収入金額に「付随費用一一七万七八五〇円(ワシノ機械との契約書に貼付した収入印紙代三万円、不動産取得税一〇万三〇五〇円、所有権移転登記費用二三万四八〇〇円及び田中製鋼所との間の賃借権確認請求事件に係る弁護士費用七五万円の合計額)」を加えるべきであると主張したが、右主張は撤回する。
六買換特例が適用される場合の譲渡費用の取扱いについて
1原判決は、法三七条により資産の譲渡による収入金額から買換資産の取得価額を控除した額(譲渡があったものとされる金額)についての譲渡所得金額の計算に当たり、譲渡した資産の取得費及び譲渡費用の合計額のうち、当該譲渡があったとされる範囲に対応する部分の金額を按分計算して、これを譲渡があったとされる金額から控除して譲渡所得金額を算出している。
2しかしながら、原判決のような計算方法を直接定めた規定はない。
そして、特別の規定がない以上、譲渡収入金額は法三七条により譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきものである。
更に、買換特例の適用を受けた買換資産の取得価額について、いわゆる取引価格の引継ぎ(譲渡資産の取得価額等と譲渡費用の合計額のうち譲渡がなかったものとされる範囲に対応する金額とすること)を定めた法三七条の三の規定は、譲渡資産に係る譲渡所得金額を計算する場合に控除される譲渡費用は「譲渡があったとされる金額」の範囲に圧縮されることを当然の前提にしているようにも見えるが、本件のように概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、次のような理由から、このような解釈を当てはめることは妥当ではない。
すなわち、概算取得費控除を規定する法三一条の四は、昭和二七年以前に取得した資産についてはその取得費を証明することが困難である実情にかんがみ、譲渡所得金額の計算上、譲渡収入金額の五パーセントに相当する金額を取得費として控除することを認めたものである(なお、通達〈措通三一の四一〉により、昭和二八年以後に取得した資産で取得費を証明することができない場合にも準用されている。)。
ところが、買換特例の適用を受ける譲渡資産について法三一条の四の概算取得費により譲渡所得金額を計算する場合には、譲渡があったものとされる譲渡収入金額(譲渡収入金額のうち買換資産の取得額を超える金額)についてその五パーセントに相当する金額を取得費として控除されるだけであって、法三一条の四によって譲渡資産の取得費自体が定められるわけではない。
したがって、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、法三七条の三が引継ぎを定める譲渡資産の取得価額等が定められない以上、法三七条の三の規定は適用される余地がない。
なお、買換資産を更に譲渡するに際し、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、法三七条の三の取引価額の引継ぎの規定を適用する余地はなく、この点からも、法三七条の三の規定は、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、適用を予定されない規定と解される。
そうすると、法三七条の三の規定は、譲渡所得金額の計算に当たり、概算取得費以外により(いわば実額に基づき)取得費を計算する場合には、買換の特例により譲渡収入金額が圧縮されるとともに、譲渡費用も取得費と同様に圧縮されると解する根拠となり得ても、概算取得費の額により譲渡所得金額を計算する場合には、譲渡費用は譲渡があったとされる範囲の金額に圧縮されるとする根拠にはなり得ない。
七重加算税賦課決定処分の適否について
1原判決は、「Aが新井組に対して支払った八三五八万二七三九円はトヤマビルが借り入れていた借入金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関係しないものであることは明らかであり、かつ、右八三五八万二七三九円の支払が右のようなものであることはAないしCにも自明のことであったにもかかわらず、AないしCは、あえてこれを譲渡所得計算明細書に新不動産の買入代金の一部として記載し、かつ、これに基づいて所得金額をことさらに過少にした内容」の確定申告をし、右八三五八万二七三九円につき事実を隠ぺいし又は仮装したものとし、本件重加算税賦課決定処分を適法であると判示した。
2ところで、Aが直接新井組に支払った形になっている九六〇〇万円の支払は次の経緯によるものである。
すなわち、Aからマンション建築の企画等に関し依頼を受けた(これを「総合企画契約」という。)トヤマビルは、Aが日綿と等価交換を行うためにトヤママンション建築工事を中止したことにより、新井組との間に締結していた建築請負契約解除に伴う損害賠償責任を新井組に対して負うとともに、トヤマビル自身もAの契約解除に伴って莫大な損害を被ることになったので、Aに対して損害賠償請求権の行使をすることになった。
このような三者間の関係から、Aが直接新井組に支払った形になっている前記金員の額は、本来ならば、Aがトヤマビルに対し損害賠償債務の履行をなし、その上で、トヤマビルが新井組に対し、同組に対する損害賠償債務と同組からの借入金とを清算支払いするという形態が採られるべきであったところ、書面上は、これを簡略化して、直接Aから新井組に対して九六〇〇万円が支払われた(換言すれば、Aからトヤマビルへの損害賠償債務の履行とトヤマビルから新井組への借入金の返済及び損害賠償の支払いが同時になされた。)形式が残る甲第一二号証の一、二及び第一三号証の一、二の各書面が作成されたものである。
そうすると、Aが新井組に対して支払った金員全部を買換資産の取得費に含まれるとする確定申告の内容を裏付けることを目的として作成されたものと原判決が断ずる乙第一三号証ないし第一五号証の書面は、トヤマビルからAに対して損害賠償請求が成立し得る限度では、仮装でも何でもないものといわなければならない。
そして、AないしCは、このような損害賠償も日綿との等価交換を行うための費用に当たるものと考えていたものであり、故意に事実を隠ぺい又は仮装して申告をしたものではない。
(控訴人の主張)
一適用条文の誤りに基づく本件処分の違法について
1控訴人らは、特例適用条文に関する規定は、申告後の納税義務を確認するという租税手続法としての内容を有する旨主張するが、課税庁が課税処分を行うために定められた規定は、税法上、青色申告を更正する場合の帳簿書類の調査・理由の附記(所得税法一五五条、法人税法一三〇条)規定されているのみで、これ以外に課税処分を行うための一定の手続要件は定められていない。
法三七条及び法三七条の五は、いずれも、譲渡所得が生じる場合、一定の条件の下に、課税の繰り延べを認めたものであり、そのための要件を定めた規定であって、課税庁が処分を行うための手続きを定めた規定ではない。
また、両条文は、確定申告書にそれぞれの規定の適用を受けようとする旨の記載をすることが必要であると規定しているが、これも、課税所得の算定のための課税要件の一つを定めたものであって、課税庁の行う更正手続きについて定めた手続規定ではない。
2控訴人らは、特例条文の適用を誤った本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法性があり、同処分は、そのことのみで違法なものとして取り消されなければならない旨主張するが、前記のとおり、法三七条及び法三七条の五の規定は、いずれも、課税要件を定めたものであって、控訴人ら主張のような手続規定ではなく、また、課税処分の取消訴訟における実体上の審理対象は、当該更正処分により認定された課税標準等の客観的存否であるから、法三七条の五を適用した場合の課税標準等が法三七条を適用した場合の課税標準等を超えていなければ(言い換えると、当該更正処分に係る課税標準等が客観的に存在すれば)、当該更正処分は違法の瑕疵を帯びるものではない。
二上地所有者が買戻した借地権等の取扱いについて
1控訴人らは、本件における譲渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を譲渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用に該当する旨主張する。
2しかしながら、そもそも譲渡所得の基因となる資産とは、「法(所得税法)三三条第二項各号に規定する資産及び金銭以外の一切の資産をいい、当該資産には、借家権又は行政官庁の許可、認可、割当て等により発生した事実上の権利も含まれる。」とされている(所得税基本通達三三一)が、その意味するところは、いわゆるキャピタル・ゲインを生ずべき資産はすべてこれに含まれるものと解される。
そして、借地権も当然、キャピタル・ゲインを生ずべき資産にほかならないから、譲渡所得の対象となる資産となる。
その上で、法三一条及び三二条は、分離課税の対象となる資産として、「土地」のほか、「土地の上に存する権利」を掲げているのであり、借地権は土地の上に存する権利にほかならないから、分離課税とされる譲渡所得の基因となる資産となるのである。
3控訴人らは、譲渡所得課税の趣旨か保有資産の価値の増加益に対して課税するものであるとし、本件のように、当該土地を譲渡するため、その譲渡契約履行のために借地契約を解除した後直ちに当該土地を譲渡した場合、取得した借地権の増加益を期待したものとはいえないから、本件旧借地権部分の借地権消滅の対価としてAが借地人に支払った金員は、当該土地の譲渡費用になるとする。
しかしながら、一般論としても、直後に転売する目的をもって借地権あるいは所有権を取得する行為であっても、増加益を期待した取引行為ではないとすることはできないものであって、このことは、実際にかかる転売で利益を上げる例があることからも明らかである。
また、そもそも譲渡費用(所得税法三三条三項)とは、資産の譲渡のため直接必要な経費であるから、譲渡資産上の抵当権を抹消するためにした第三者の債務の弁済(最高裁昭和三六年一〇月一三日第二小法廷判決・民集一五巻九号二三三二頁)、譲渡担保の目的となっている資産の譲渡に際してその受戻しに要した特別の経費(東京地裁昭和三九年三月二六日判決・下級民集一五巻三号六三九頁)はこれに含まれないとされている。
以上により、借地権付土地を更地として譲渡するに際し、借地権を消滅させるのにかかった費用が譲渡費用に当たらないことは明らかである。
4控訴人らは、本件の譲渡資産は、旧底地部分と旧借地部分とに別れ、旧借地部分は、短期譲渡所得に該当する非事業用資産である旨主張するが、右主張が失当であることは、原判決が正当に判示するとおりである。
三無償貸借部分と事業用資産の範囲について
1控訴人らは、Aが当初から所右していた土地一一四四・七七平方メートルの一部には、Bに無償使用させていた九八・六〇平方メートルが含まれているが、その全体に占める割合は八・六パーセントと僅少で、法関係通達三七四の要件を満たすから、全部を事業用資産と見るべきであると主張する。
右八・六パーセントの計算方法は、分母に旧不動産のうち原判決別表二の1及び2の土地の合計面積一一四四・七七平方メートルをとり、分子にBの使用部分九八・六〇平方メートルをとるというものである。
しかしながら、Aが日綿に譲渡した土地は原判決別表二の1ないし3の土地であるから、そのうち、右1及び2の土地のみを取り出して、非事業用資産の割合を計算しても意味のある数値とはいえない。
これを筆単位でみると、一二パーセントを超え(九八・六〇/七九七・〇一)、取引単位でみると、一五パーセントを超え(一九七・九九/一二四四・一六)、いずれにしても、非事業用の割合は一〇パーセントを超えるから、法関係通達三七四ただし書を適用することはできない。
2控訴人らは、本件買換資産である新不動産は、トヤマビルがすべてAから一括して賃借を受け、その名において新不動産全部に火災保険を掛けていたのであるから、当初から全部が事業用資産に該当する旨主張するが、右主張が失当であることは、原判決の判断するとおりである。
四新井組に対する工事支出金等について
控訴人らは、新井組に対する工事支出金は買換資産の取得費に該当する旨主張するが、同工事支出金は買換資産の設備費及び改良費の性格を有するものではないから、原判決の判断のとおり右工事支出金は買換資産の取得費に該当しないものである。
なお、収入印紙代金五万円のうち、譲渡資産(旧不動産)の売渡しに要する部分の金額三万一四一七円は譲渡費用、買換資産(新不動産)の取得に要する部分の金額一万八五八三円は取得費として処理した原判決は相当である。
五譲渡資産と買換資産の対応(買換取得資産を按分計算すること)について本件譲渡資産である旧不動産及び買換資産である新不動産のいずれにも事業用部分と非事業用部分があるのであるから、法三七条の規定が適用されるためには、譲渡資産及び買換資産がいずれも事業用資産であることを要するところ、譲渡資産のうち、付加部分は短期保有資産であり、本来部分は長期保有資産である。
したがって、法三七条の適用に当たっては、事業用資産である短期保有資産及び長期保有資産の各譲渡につき、それぞれの譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を算定して譲渡所得金額を計算することが必要であるが、その計算方法としては、原判決のとおり、右の各譲渡資産に対応する買換資産の取得価額を譲渡した短期保有及び長期保有の各事業用資産の譲渡時の価額の比により按分して計算するのが合理的かつ妥当である。
六買換特例が適用される場合の譲渡費用の取扱いについて
1控訴人らは、買換特例により課税の繰延べが適用される場合、譲渡収入金額は譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、譲渡費用の額は、圧縮後の譲渡収入金額から譲渡費用の全額控除されるべきである旨主張する。
2しかし、買換特例が適用される場合に譲渡費用として控除される金額は、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額に圧縮されるべきであり、控訴人らの前記主張は次のとおり失当である。
(一)そもそも買換特例が適用される場合には、法三七条による買換特例により譲渡資産の一部について譲渡がなかったものとして取り扱われる部分以外の「課税される譲渡益部分」に応じた取得費及び譲渡費用のみが控除されるとするのが極めて自然というべきである。
課税されない譲渡益部分に応じた譲渡費用までも控除するとなると、譲渡収入とは全く関係のない経費を必要経費として控除するに等しく、所得計算としての合理性を有しないといわざる得ないからである。
(二)更に、控訴人ら主張のような見解に立つと、課税される部分の占める割合が少ないような場合、譲渡費用の額いかんによっては、その全額を控除することによって、譲渡所得金額がマイナスとなり得ることもあるという不合理な結果が生じることになる。
(三)現行の法三七条は、本件更正当時と異なり、原則として買換資産の二〇パーセントについては課税されることになっているが、この場合の計算でも控除される譲渡費用(及び取得費とも)は、課税される部分に対応する金額とされており、そこに取得費が概算取得控除方式による場合の例外は認められていない。
(四)控訴人らは、譲渡所得の計算に当たり、法三一条の四(概算取得費控除)が適用されると、法三七条の三(買換特例の適用を受けた買換資産の取得価額の引継ぎ)の適用がなく、したがって、譲渡収入金額は譲渡があったものとされる金額に圧縮されるものの、譲渡費用はその譲渡収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、そのように解する文言上の根拠はない。
そもそも、法三七条の買換特例は、譲渡資産の譲渡によって生じた譲渡益の全部又は一部を買換資産に移転するという形で課税の繰延べをさせることを意味し、その課税の繰延べを受けていた部分の金額は、当該買換資産を後日譲渡した際に、その買換資産の保有期間中の値上がり益(本来の譲渡益)と合わせて、買換資産の譲渡益という形で実現することになっている。
逆にいうと、課税の繰延べの対象とならない譲渡益部分は譲渡資産の譲渡の際に課税されることになっているのであって、その譲渡益部分を計算するには、課税対象となるべき圧縮された収入金額から、その部分に対応する取得費及び譲渡費用を控除するのでなければ、課税部分に係る譲渡益を適正に算出することはできない。
このように概算取得費により取得費が計算される場合、何故譲渡費用のみが全額控除されなければならないのか疑問といわざるを得ない。
七重加算税賦課決定処分の適否について
Aが、トヤママンションの建築工事の中止に伴う損害賠償金をトヤマビルに対して支払わなければならない根拠ないし義務のないことは原判決説示のとおりであるほか、Aは右損害賠償金を支払った事実もないものである。
AないしCは、本件申告をした当時、Aが新井組に対して支払った九六〇〇万円のうち八三五八万二七三九円は、トヤマビルが新井組から借り入れていた借入金元本及びその利息金の返済であり、それが新不動産の取得に直接関係ないものであることを十分承知していたにもかかわらず、あえてこれを譲渡所得計算書(乙第二号証)に新不動産の買入代金の一部として記載し、かつ、これに基づいて所得金額をことさらに過少にした内容の本件申告書(乙第一号証)を提出したのであるから、これが原判決説示のとおり隠ぺい、仮装に当たることは明らかである。
第三証拠関係(省略)

○理由

一当裁判所も、本件更正及び本件決定は、いずれも、適法であり、その各取消しを求める控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないものと判断するものであるが、その理由は、次に付加、訂正、削除するほか、原判決の理由説示記載のとおりであるから、これを引用する。
1原判決三〇枚目裏一一行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。
「もっとも、前記宥恕規定の趣旨にかんがみると、右特例適用条文の記載に、明らかな誤記や疑義のある記載があって、その記載自体の補正を求める必要があるときには、税務署長が、納税者(申告者)の意思確認を行ない、その補正結果に基づいて課税の処理(適用条文の判断等)を行うことは許容されるものというべきである。」
2同三五枚目表三行目の「されている」の次に「(乙第二号証参照)」と加入する。
3同三六枚目表九行目の「調査」の前に「被控訴人主張のとおり」と加入する。
4同三六枚目裏四ないし五行目の「決すべきものであり」を「決すれば足り」と改める。
5同一〇行目と一一行目との間に次のとおり付加する。
「(四)控訴人らは、前記説示(原判決引用)のとおり本件申告に係る昭和五六年分のAの譲渡所得額については、法三七条が適用されるべきものであるとすると、被控訴人が法三七条の五を適用してなした本件処分には、課税内容の違法除去では救済されない手続的違法があることになるから、租税軽減措置に関する特例条文の適用を誤った本件処分は、そのことのみで違法なものとして取消しを免れないと主張するので、この点について検討する。
ところで、法三七条及び法三七条の五の各規定についてみるに、右各規定は、いずれも、個人がその所有する資産を譲渡した場合の譲渡所得については、一定の条件の下に、課税の繰り延べを認めることにした上、そのための要件を定めたものであり、また、両条文には、確定申告書にそれぞれの規定の適用を受けようとする旨の記載をすることが必要であると規定されているが、これらは、いずれも、譲渡所得の算定のための課税要件を定めたものであって、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する規定である所得税法一五五条、法人税法一三〇条のように課税処分を行うための一定の手続要件を定めたものではないと解するのが相当である。
そして、国税通則法二四条によると、税務署長は、納税申告書に記載された課税標準等又は税額等の計算が国税に関する法律の規定に従っていなかったとき、その他当該課税標準等又は税額等がその調査したところと異なるときは、その調査により、当該申告書に係る課税標準等又は税額等を更正することができるが、この更正は、新たに納税義務を課す処分ではなく、課税要件の充足によって既に成立している課税標準等又は税額等を数額的に確定させる処分であり、それは税額を増加又は減少させる場合にのみ行うものであって、税額算定の根拠事実が異なる場合に行うものではないと解され、したがって、更正処分の取消訴訟における実体上の審理の対象も、当該更正処分による課税標準等又は税額等の適否にあると解されるので、当該更正処分による課税標準等又は税額等が納税者の選択した租税軽減措置に関する特例条文によって計算した客観的な課税標準等又は税額等を上回るものでない限り、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有するものではないというべきである。
すなわち、青色申告を更正する場合の帳簿の調査・理由の附記に関する手続規定に違反する場合には、当該更正処分は取消原因たる瑕疵を有する処分であると解すべきであるが、本件のような課税標準等の計算に関する特例規定については、その適用条文を誤った更正処分がなされたとしても、その課税標準額算定の根拠事実に異同があるわけではないのであるから、そのこと自体をもって取消原因たる瑕疵ある処分となるものではなく、当該更正処分による課税標準額が正しい特例規定に基づき計算した課税標準額を上回るものでない限り、当該更正処分は違法とならないものというべきである。
よって、控訴人らの前記主張は採用できず、以下、本件処分に係る課税標準額が納税者であるAによって選択された法三七条に基づいて計算した課税標準額を上回っているかどうかを検討することとする。」
6同三六枚目裏一一行目の「2事業用資産の範囲」を「2の2事業用資産の範囲」と改め、同行目の前に次のとおり付加する。
「2の1譲渡所得の基因となる資産の範囲
(一)前記認定(原判決引用)のとおり、Aは、自己の所有する原判決添付別表二の1の土地のうち一三二・七一平方メートルを田中製鋼所に賃貸し、また、同土地のうち五六五・七〇平方メートル及び同じく自己の所有する原判決添付別表二の2の土地をワシノ機械に賃貸していたが、Aは、右1及び2の土地を提供し、トヤマビルをして、トヤママンションの建築、賃貸、管理を行わせることを計画し、昭和五四年三月九日、田中製鋼所に対し移転料九〇〇万円を支払って同月二五日限り右賃貸に係る土地の明渡しを受けることを合意したほか、右トヤママンション建築計画中止後の同年一一月二七日、Aは、日綿との間で等価交換方式による金山グランドハイツの建設を進めることにし、ワシノ機械から代金九三〇〇万円で前記同社に対する賃貸土地の借地権及び原判決添付別表二の3ないし5の不動産を買い受けた上、日綿に対し旧不動産を四億八九五七万六九六〇円で譲渡し、新不動産を二億八九五七万六九六〇円で取得する旨の契約を締結し、これを実行したものである。
この事実によれば、Aは、原判決添付別表二の1及び2の土地上にマンションを建築する妨げとなる田中製鋼所及びワシノ機械の賃借権を消滅させるため、田中製鋼所に対しては九〇〇万円の移転料を支払って賃借権を取得し、ワシノ機械からは有償で賃借権を買受けたものと認めるのが相当である。
そうすると、右賃借権の消滅及び買受けは、土地所有者が第三者の有していた賃借権を取得することにほかならないものというべきであり、Aの日綿に対する原判決添付別表二の1及び2の土地の譲渡は、譲渡所得の計算上、譲渡所得の基因となる資産である底地と借地権の譲渡が行われたものと観念するのが相当である。
(二)これに対し、控訴人らは、本件における該渡資産は土地それ自体であり、Aが、土地を該渡するため、借地権消滅の対価として借地人に支払った金員は、譲渡所得を発生させる資産(借地権)の取得費ではなく、当該土地を譲渡するための費用となるべきものであると主張するが、以下に検討するとおり、右主張は失当であり採用できない。
すなわち、譲渡所得とは、資産の譲渡による所得をいい(所得税法三三条一項)、かつ、右資産とは、譲渡性を右する財産をすべて合むものと観念されるところ、この譲渡所得の対象となる資産には、棚卸資産等の一定の資産は含まれないこととされている(所得税法三三条二項)が、法律上、控訴人らが主張するような事情の下で取得した借地権を譲渡所得の基因となる資産から除外した規定は存しない。
そして、譲渡所得課税の趣旨は、控訴人ら主張のとおり、保有資産の価値の増加益に対して課税しようとするものであって、資産が保有者の手を離れるのを機会に、その保有期間中の増加益を清算して課税しようとするものであるが、これは、一般的、典型的取引を念頭においたものであり、法律上、取得した直後に転売する目的をもって取得した資産で、保有期間内の譲渡益が期待し得ない資産であることをもって、譲渡所得の対象となる資産であることが否定されているわけではない。
要するに、借地権者が借地権の設定されている土地を所有者に返還して受け取る対価は、譲渡性のある財産と観念される借地権の譲渡の対価として譲渡所得に当たり、反面、借地権の返還を受けた土地所有者は、譲渡所得の対象となる資産(借地権)を取得したものと解するのが相当であり、土地所有者が右土地を他に譲渡した場合には、それがたとえ取得直後に行われたものであっても、借地権部分につき譲渡所得の収入金額を観念することができるものというべきである。
仮に、控訴人ら主張のように、税務上、借地権の消滅ないし買戻しの対価は、底地の譲渡費用で、資産の取得費に当たらないとすると、右対価出捐直後に土地を譲渡して収受した金員はすべて底地部分の譲渡対価であるとしか観念できないことになるが、そうだとすると、底地の価額は、借地権の消滅ないし買戻しの前後で大きな相違が生じることになり、借地権の消滅ないし買戻し後の価額すなわち譲渡の対価は、底地の客観的な価額(時価)を超えるという経済原則に反する不自然な結果をもたらすことになるものといわなければならない。
よって、控訴人らの前記主張は、到底採用できない。」
7同三七枚目裏九行目の「当該」の前に「その経緯にかんがみれば、元々、借地権の設定されていない土地を事業として賃貸したのであるから、」と加入する。
8同三九枚目裏四行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。
「更に、旧不動産の譲渡取引につき、土地の筆単位でみると、前記(原判決引用)のとおりBの使用部分は一二・三七パーセントになるが、これを譲渡された土地全体の単位でみると、前記認定(原判決引用)のとおり譲渡対象土地の総面積は一二四四・一六平方メートルであり、非事業用の部分(Bの使用部分とワシノ機械から買い受けた原判決添付別表二の3の土地)は一九七・九九平方メートルであるから、非事業用の割合は一五パーセントを超えることになり、法関係通達三七四ただし書を適用することはできない。」
9同四一枚目表九行目の「書面」を「書面一(乙第二〇号証)」と改める。
10同四二枚目表九行目の「2」を「2の2」と改める。
11同四三枚目表四行目の「相当である。」の後に次のとおり付加する。
「すなわち、法三七条による買換特例は、一の事業用資産である譲渡資産又は取得資産の一部分のみを買換えの特例対象とすることを許容していない(法三七条一項、租税特別措置法施行令二五条七項、法関係通達三七一九参照)ので、本件のように譲渡資産たる本来部分・付加部分が一体となって買換資産たる新不動産部分と対応していることが実質的にも契約上も明らかである場合には、このような対応関係を前提として繰延べ計算が行われるべきであるところ、本件では、本来部分・付加部分及び新不動産部分間の個々具体的な対応関係が契約上も実際上も識別し難く、かつ、譲渡資産の中に短期譲渡所得の対象となるもの(借地権部分、付加部分)と長期譲渡所得の対象となるもの(底池部分、本来部分)があるというのであるから、本来部分と付加部分のそれぞれの対応する買換資産の価額は、本来部分・付加部分により按分して算定するのが合理的である。」
12同四三枚目裏三行目から同四四枚目表四行目までの部分を削除する。
13同五四枚目裏八行目と九行目との間に次のとおり付加する。
「前記(原判決引用)のとおり、買換特例が適用される場合に控除される譲渡費用の額については、譲渡があったものとされる金額に対応する部分の金額であると解するのが相当である。
これに対し、控訴人らは、本件のように取得費の額を譲渡収入の五パーセント相当額による概算取得費控除の方式とした場合(法三一条の四)には、譲渡収入金額は法三七条により譲渡があったものとされる範囲に圧縮されるものの、その譲渡収入金額から譲渡費用の全額が控除されるべきであると主張するが、右主張は、被控訴人の当審における主張六の2に掲げる理由のほか、次の理由を考慮すると、到底採用できない。
すなわち、法三七条の適用において、例えば、譲渡収入金額が買換資産の取得価額を超える場合には、「買換資産の取得価額を超える部分の譲渡があったものとして」譲渡所得の金額を計算することになっている。
これを換言すれば、「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算するということである。
これに対し、例えば、保証債務の履行のため資産を譲渡した場合に、その履行に伴う求償権の行使ができなくなったときは、所得税法六四条により、各種所得金額からその回収不能額に相当する収入金額がなかったものとして当該所得金額を再計算することになっている(同法施行令一八〇条)ところ、この所得税法六四条の適用による再計算に当たっては、その規定振りからして、譲渡費用の額は収入金額の減額に応じて圧縮されることなく、その全額を控除し得ることとされているが、このような規定振りになっていない法三七条においては、所得税法六四条の場合と同様に処理することはできないものと解するのが相当である。
つまり、譲渡があった場合の所得金額は、収入金額、取得費及び譲渡費用の科目を基礎として計算するので、「・・・部分の譲渡がなかったものとして」譲渡所得の金額を計算する場合には、これらの収支科目の金額はいずれも譲渡がなかった部分に圧縮されるものと解するのが相当である。
なお、控訴人らは、買換特例の計算上、取得費の額を実額で計算している場合には、法三七条の三の規定を根拠として、譲渡費用の額も圧縮されるものと解されるが、取得費の額を法三一条の四に規定する概算取得費によっている場合には、法三七条の三の規定の適用がないから、譲渡収入金額は圧縮されるものの、譲渡費用はその圧縮後の収入金額から全額が控除されるべきである旨主張するが、この点については、先に掲げた理由のほか、次の理由により失当である。
すなわち、概算取得費控除の規定は、要は実額に代えて控除金額を計算することを認める趣旨のものであるので、取得費の額を実額で計算した場合と概算取得費によった場合とで、その他の部分にまで著しい差が生じることが当然とするような解釈を採ることは相当でない。
しかも、法三一条の四第一項ただし書は、取得費の実額が概算取得費の金額を超えることが明らかであれば実額により計算することができるとしており(なお、取得時期が昭和二八年以降である資産の譲渡についても、法関係通達三一の四―一で概算取得費計算が認められているが、この場合も同様である。)、概算取得費の額と実額とを比べ有利な金額を取得費として控除することが認められているところである。
したがって、実額よりも有利であるとして概算取得費を選択し概算取得費により取得費の額を計算した場合、(控訴人らの主張によれば、取得費の額を実額で計算した場合には、本来圧縮すべきこととなるのに)、何故譲渡費用の全額を圧縮後の収入金額から控除できるものとして、更に有利な処理を施さなければならないのかについては、これを首肯するに足りる合理的理由を見出すことができない。
ちなみに、法人における買換特例(法六五条の七)は、個人のように「買換資産の取得価額までの部分の譲渡がなかつな」ものとして圧縮計算するのではなく、「圧縮基礎取得価額」((1)買換資産の取得価額と(2)譲渡資産の対価の額のいずれか少ない全額)に、左記に示す「差益割合」を乗じて計算した「圧縮限度額」(現行法は、この金額に更に原則として八〇パーセントを乗じた金額が圧縮限度額となる。)の範囲内で、損金経理等により買換資産の帳簿価額を直接減額する等の方法で所得の圧縮計算をすることになっているが、計算方法は異なっても、個人と法人の圧縮金額(限度額)は基本的に同一になるべきものと解されるところ、法人の圧縮金額の計算上、「圧縮基礎取得価額」に「差益割合」を乗じることは、個人において、譲渡がなかった部分の金額計算上、収入、取得費及び譲渡費用のいずれも応じる部分を減額することと軌を一にするものというべきである。
差益割合=(譲渡資産の譲渡対価額)(譲渡資産の簿価+譲渡経費額/譲渡資産の譲渡対価額」
14同五七枚目表八行目の「ついては、」の次に「申告時における」と加入する。
15同六〇枚目表三行目の「あること、」を「ある(それなのに、トヤマビルが新井組から立退料等に充てるために借り入れた八〇〇〇万円の相当部分がCが経営するトヤマ工務店の運転資金に流用されていた。)のに対し、Aの責任は原判決添付別表二の1及び2の土地をマンション建設用地として提供するというものであったこと、」と改める。
16同一一行目の「明らかではない。」を「明らかではないのみならず、Aがトヤママンション建築工事の中止によってトヤマビルに支払うべき損害金が何故にこれとは何の関係もないトヤマビルの新井組からの借入金及びその利息との合計額となるのかも明らかではない。」と改める。
17同六〇枚目裏三行目の「また、」の次に「トヤマビルの昭和五五年九月三〇日期の法人税確定申告書(甲第二一号証)には、トヤマビルがAから九六〇〇万円を受け取ったとする計上もないこと、」と加入する。
二よって、原判決は相当であって、控訴人らの本件控訴は理由がないから、これを棄却することとし、控訴費用の負担につき行政事件訴訟法七条、民事訴訟法九五条、九三条を適用して、主文のとおり判決する。

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